御曹司、家政婦を溺愛する。

「確かにあの時はみんなに詰め寄られたことは本当だし大変だったけど、いつも決まって新堂くんが助け舟を出してくれたの」

──え?もしかして、新堂くんの好きな人って……?

「新堂くんは私を庇うようなことを言うから、クラスの子たちが「新堂くんは桜子が好きなのか」と言われたの。彼は「ラブじゃなくてライクだな」って、笑って言ったのよ。で、その後に呼び出されたの」
桜子は振り返り、記憶を辿るように静かに話した。

「新堂くん、私の前で土下座をしたの」
「ど……土下座?」

『南田、お願いだ。誰にも言わないと約束する。佐藤に何があったのか、教えてくれないか。このとおり、頼む!』

「まさか」
「本当よ。新堂くん、頭を下げたまま動かないから、大変だったのよ。思えば、彼は必死だったのね」
と、桜子はワインをひと口飲む。
「新堂くんが言ったのよ。「俺たちは学生だけど、佐藤のために出来ることがあれば、やってあげたい」って。でも私は言ったのよ。「私たちに出来ることは、多分なにもないよ」って。その上で、鈴のことを話したわ」
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