御曹司、家政婦を溺愛する。
平日の暇な時は、佐藤の手伝いをするようになった。といっても皿を出すとか、佐藤の畳んだ洗濯物の片付けとか。彼女も俺が隣にいても特に何も言わないので、好きにさせてもらっている。
朝から曇っている日、佐藤は関口から電話が入った俺を待たずに買い物へ行ってしまった。
話が長くなってしまい、雨が降り始めた外へ佐藤を追いかけた。
ショッピングモールにいなかったので、交差点の向こうのスーパーまで行ったのかも、とベリーヒルズビレッジを出たところで、すっかり濡れた佐藤を見つけた。
強制的に風呂に入れ、下着のサイズを見てコンシェルジュに新たな下着を買いに行かせる。
絞れるくらいに水を吸った佐藤の服を洗濯した。
コンシェルジュが買ってきた下着を見て、佐藤を想像してしまったことは内緒だ。
やはり彼女は熱を出してしまった。ベッドに寝かせたが、熱で頭がぼんやりしているらしく、真っ暗な部屋の中で俺が着替えさせたのも、口移しで水を飲ませたことも、翌朝に元気になった佐藤は覚えていないようだった。
もちろん、今は言うつもりはない。
熱で弱っている佐藤を抱きしめる。
──俺が親父の後を継ぐと決めたのは、半分はお前のためなんだけとな。
高校の頃、初めて佐藤を見て可愛いと思った。初めて無条件で自分が守ってやりたい女だと思った。
大切にしたい女だと思った。
親同士が決めた許嫁、大河内美織が転校してきたのは、それからすぐのことだった。
親父同士が昔からの付き合いがあるから、美織とも小さい頃から何度か会っていた。成長と共に会う機会は少なくなったが、それでも親父に連れていかれ、一緒に食事をすることはあった。