御曹司、家政婦を溺愛する。

「改めて、家主の新堂だ。この部屋で働く上でのルールは一つだけだ。入室禁止の部屋が二つある。書斎と納戸だ。両方は施錠してあるが、無理に鍵を開けようとするとセキュリティが作動して警備員が来るから気をつけろよ。家政夫のお前にだけ言っておくが、俺は今からしばらく戻らない。だから食事も必要ない。ただ、俺が毎日家に帰宅していることを装ってくれ。これは家政夫のお前にしかできないことだ」

藤村は納得していない顔をする。
「何故そこまでしないといけないんです?それに出社しなければ変に思われますよ?」
「俺はいいんだよ。世界にあるうちのホテルのどこかに出社していれば」
と答えていると、スマホが鳴る。
関口だ。
レジデンスの地下駐車場に来たらしい。俺はリビングの大きなキャリーケースを転がす。
「いってくる。困ったことがあればそこに名刺があるから連絡しろ。関口の番号も書いてある。いいか、絶対に俺がいないことを悟られるなよ」
と、念を押して自宅を出た。

あの家政夫を一人残すことは少し不安だが、仕方がない。出来るだけ戻れるようにしよう。

一つだけ、佐藤の顔が見たかった。

「佐藤、待ってろよ」
俺、絶対にお前を迎えに行くから。


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