御曹司、家政婦を溺愛する。
その、サラッとしたストレートの髪も。
二重のハッキリした目元も。
鼻筋の通った、スッキリとした輪郭も。
少し薄めな、その唇も。
チャームポイントの左目下の泣き黒子も。
大人の男として成長を遂げ、随分と印象が変わったように見えるが、自分の記憶が正しければ、間違いない。
新堂隼人。
本人だ。
女性たちに囲まれたハーレム状態の彼の姿に、何故か心の底からイライラが溢れてくる。
「隼人、音楽を消してちょうだいっ!」
と、幸恵夫人は叫んでいるが、その声は隣にいる私でも小声にしか聞こえず、まして離れている彼らには聞こえていないだろう。
大画面のテレビが置かれた長いテレビボードに一緒に置かれているステレオを確認する。そして閉まっているカーテンがいくつあるのか、目で追う。
幸恵夫人の手が離れていったところで、私はすぐにステレオに向かい電源らしきスイッチを押して音楽を止めた。続いて締め切ったカーテンを両手で引き裂くように思いっきり開けて窓も開けた。
明るい日差しが一斉に部屋の中に取り込まれて広がっていく。
女性たちの「キャッ」という短い悲鳴も聞こえたが、私は構わず外の空気を取り込んだ。
エアコンのリモコンでオフにする。息苦しかった空気が浄化されていく清々しさを感じた。