あやかしあやなし
第十章
 結局それから三年ほど、そのままの状態が続いたある日、惟道の元に式が飛んできた。結構大型の式で、文を抱えている。

「そのような式も飛ばせるようになったということは、都の罠も大分なくなったようじゃの」

 和尚が呑気に言うが、小丸は鼻を盛大に鳴らした。

「全く、こんなに時間がかかるほどめちゃくちゃにしてくれて、ほんっと迷惑な野郎だよ」

 じろりと板の間の雑巾がけをしていた鬼っ子を睨む。ここに来てからは、鬼っ子の様子に変化はない。危惧していたような、鬼の力が噴出するということもなく、惟道と同じように家事をこなしている。

「したが、誰が罠を解いていったのであろうな?」

「章親ら、陰陽師じゃないの?」

「そうかもしれんが、元々罠の術を放ったものでないと、おおよその場所も特定できないのではないか?」

「陰陽師なら罠がかかってるところぐらい見えるでしょ」

「そうかのぅ。そんな何でも見えたら厄介ではないか。そもそもどこにあるかもわからん罠を一つ一つ消していくなど」

「それもそうね。そもそも都は自然の結界の中にあるんだし、常に術が見えたらしんどいかもね」

 まぁ罠がなくなったのなら良いことじゃん、と伸びをしつつ、小丸は惟道に擦り寄った。

「式ってことは章親だね? 何?」
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