あやかしあやなし
終章
「何だかんだで、心配事はなくなったって感じかな」
僧正坊らを見送った後、続けて惟道らを送りつつ、章親が言った。
「まだ惟道のことは気になるけど……。本当に体は何ともない?」
「章親は心配性だの」
ふふ、と小さく笑う惟道は、表情こそ乏しいものの、嬉しそうだ。
「長く身の内に物の怪を入れてた人なんて見たことないもの。僕が惟道に雛を入れたようなもんだし、しばらく様子を見たほうがいいと思うんだけどな」
「章親が責任を感じることはない。元々俺の中には、もっと邪悪な鬼がおったではないか。あれだって、別に俺の体に影響はなかった」
「まぁそうだけど……」
惟道の額の傷は、鬼を降ろす術と封じる術のせいであって、鬼自身のせいではない。身の内の鬼のせいで惟道の気自体が穢れたので、精神的にはいい状態ではなかったはずだが、そこは感情がない故、常人より影響はなかったのだろう。
「惟道のその能力は、多分昔ほど強くないと思う。だから今後、同じように怪我した物の怪がいても、安易に身の内に入れたりしないでね」
「え、どういうことさ?」
小丸が少し驚いて聞き返す。章親は少し苦笑いして続けた。
「昔の惟道と今の惟道は、違うと思わない?」
「ん〜? うーん、そんな昔々の惟道は知らないけど……」
小丸が惟道と知り合ったのは、惟道が和尚のところに来てからだ。
僧正坊らを見送った後、続けて惟道らを送りつつ、章親が言った。
「まだ惟道のことは気になるけど……。本当に体は何ともない?」
「章親は心配性だの」
ふふ、と小さく笑う惟道は、表情こそ乏しいものの、嬉しそうだ。
「長く身の内に物の怪を入れてた人なんて見たことないもの。僕が惟道に雛を入れたようなもんだし、しばらく様子を見たほうがいいと思うんだけどな」
「章親が責任を感じることはない。元々俺の中には、もっと邪悪な鬼がおったではないか。あれだって、別に俺の体に影響はなかった」
「まぁそうだけど……」
惟道の額の傷は、鬼を降ろす術と封じる術のせいであって、鬼自身のせいではない。身の内の鬼のせいで惟道の気自体が穢れたので、精神的にはいい状態ではなかったはずだが、そこは感情がない故、常人より影響はなかったのだろう。
「惟道のその能力は、多分昔ほど強くないと思う。だから今後、同じように怪我した物の怪がいても、安易に身の内に入れたりしないでね」
「え、どういうことさ?」
小丸が少し驚いて聞き返す。章親は少し苦笑いして続けた。
「昔の惟道と今の惟道は、違うと思わない?」
「ん〜? うーん、そんな昔々の惟道は知らないけど……」
小丸が惟道と知り合ったのは、惟道が和尚のところに来てからだ。