あやかしあやなし
「器の危うさは、道満殿によく教わった。そのように危険な目に章親を遭わすわけにはいかん。その時こそ俺が代わりになるべきだろう」

「……その章親と物の怪に対する異常な入れ込みようは、何とかならんもんかね」

 胡乱な目を向けつつ、小丸が呟いた。章親と物の怪のためなら、惟道は自己犠牲も厭わない。
 章親がまた苦笑いを浮かべた。

「器の危うさがわかってるなら、僕の懸念もわかるでしょ。物の怪も大事だけど、自分の身も大事にしてよ。惟道が皆を想うように、僕も物の怪も皆、惟道を想ってるんだからね」

 章親が言ったことに、惟道はきょとんとした。

「今後は自分の身に危険が及ぶかもしれないってときは、相談して欲しい。そうだ、雛がいるじゃないか。雛が自由に飛べるようになれば、文使いもしてもらえるよ」

 撫で撫で、と惟道に抱かれている烏鷺の頭を撫でると、烏鷺は、任せろと言わんばかりに、ぎゃ、ぎゃ、と鳴く。その様子に、また惟道は、ふ、と笑った。

「章親がそう言ってくれておるなら、俺もそれに応えねばな」

 頼むぞ、と腕の中の烏鷺を軽く揺すり、次いで惟道は章親を見た。

「そういえば、結局鬼っ子と雛は対面できなんだな。雛もそのうち鞍馬に行くこともあろう。大丈夫であろうか」

 そういえば、と皆の視線が烏鷺に集まる。酷い目に遭わされた鬼っ子の存在は、烏鷺にとって恐怖かもしれない。

「あの子がどういう状態かによるかな。そこのところは、僧正坊様が見てくださると思う。お寺と烏天狗たちの拠点は同じわけではないし、僧正坊様がおられる限り、大丈夫と思うよ」
< 136 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop