あやかしあやなし
「あの雛、烏兎の子供かなぁ」
「己の子であれば、いよいよとなったら戻ってくるであろ」
呼び戻そうにも最早姿は見えないし、今はそれほど強い物の怪もいないので、烏兎の妖気を追うこともできない。小丸は妖狐だが、妖狐は穢れを嫌うので、穢れのついた烏兎の気は追えないだろう。
「もしかして、例の都の物の怪狩りにやられたのではないか?」
ふと思い出し、厨に戻りながら惟道が言ったことに、ぽん、と小丸が手を打った。
「あ! そっか、だからあんなに頑なに陰陽師を避けてたんだね」
「逃げ延びたところにも陰陽師がおった、ということか」
「俺は陰陽師ではない」
惟道は元々外法師に育てられ、その後陰陽師の家に引き取られていたので、本人にその気はなくとも、そちらに詳しくなる。それに外法師に拾われたのも、資質があったからだ。もっともきちんと術を習ったことなどないのだが。
「けど、安倍家といえば、その道では知らぬ者のいない陰陽道の大家じゃからの。安倍家といえば陰陽師、と思うのが普通じゃ」
惟道が安倍家にいたのは一年ほどだ。今後は下手に名前を出すものではないな、と思いつつ、惟道は井戸で水を汲んだ。
そういえば、安倍章親は水を介して状況を見ることができるようだ。物の怪狩りのことを聞いてみたいと思ったが、生憎惟道は、そのような器用な芸当はできない。それにあの技は、相手のところに式神がいてこそではなかったか。つまり、今ここに章親の式神がいないと繋がらないということだ。
「己の子であれば、いよいよとなったら戻ってくるであろ」
呼び戻そうにも最早姿は見えないし、今はそれほど強い物の怪もいないので、烏兎の妖気を追うこともできない。小丸は妖狐だが、妖狐は穢れを嫌うので、穢れのついた烏兎の気は追えないだろう。
「もしかして、例の都の物の怪狩りにやられたのではないか?」
ふと思い出し、厨に戻りながら惟道が言ったことに、ぽん、と小丸が手を打った。
「あ! そっか、だからあんなに頑なに陰陽師を避けてたんだね」
「逃げ延びたところにも陰陽師がおった、ということか」
「俺は陰陽師ではない」
惟道は元々外法師に育てられ、その後陰陽師の家に引き取られていたので、本人にその気はなくとも、そちらに詳しくなる。それに外法師に拾われたのも、資質があったからだ。もっともきちんと術を習ったことなどないのだが。
「けど、安倍家といえば、その道では知らぬ者のいない陰陽道の大家じゃからの。安倍家といえば陰陽師、と思うのが普通じゃ」
惟道が安倍家にいたのは一年ほどだ。今後は下手に名前を出すものではないな、と思いつつ、惟道は井戸で水を汲んだ。
そういえば、安倍章親は水を介して状況を見ることができるようだ。物の怪狩りのことを聞いてみたいと思ったが、生憎惟道は、そのような器用な芸当はできない。それにあの技は、相手のところに式神がいてこそではなかったか。つまり、今ここに章親の式神がいないと繋がらないということだ。