あやかしあやなし
名乗った小丸に、青年は少し目を見開いた。そして納得したように手を降ろす。
「惟道か。あいつ、相変わらず物の怪三昧の日々のようだな」
言いながら、青年は小丸を追い越して門をくぐった。少し躊躇った後、小丸も後に続く。
「章親ー、惟道からの使いが来てるぞー」
庭を歩きながら声をかけると、どこからともなく現れた童女が、素早く奥に走っていく。するとすぐに、童女の去ったほうから慌ただしい足音が聞こえてきた。
「も、守道っ。何、惟道が来たのっ?」
奥から走り出てきたのは、惟道と同じ歳ぐらいの陰陽師。これが安倍章親である。
「あれっ。君は確か」
「お久しぶりです」
ぺこんと頭を下げる小丸に、章親は柔らかな笑みを向けた。
「いやよく来てくれたね。疲れたんじゃない? どうぞ、入って」
屈託なく小丸を招き入れ、章親は先ほどの童女に茶と菓子を持ってくるよう言い付ける。
が、小丸は少し落ち着きなく、部屋の奥を見た。 門前から感じていた物凄い神気は、その奥から感じる。
「あのぅ、おいら、安倍家に来たのは初めてだけど、いつもこんな神気が溢れてるの?」
ここまで感じるのは小丸故なところもあろうが、陰陽師なのであれば普通より敏感なはず。ずっとこのように強い神気を浴びていると疲れるのではないだろうか。
おずおずと言うと、章親は、ん、と顔を上げた。
「おいらは妖狐だ。そこいらの物の怪よりも妖力は強い。そのおいらが疲れるほどの気って、人にも良くないんじゃ……」
「ほほぅ。おぬし、我の気を感じるか」
小丸の言葉に被る勢いで、部屋の奥に垂らされた御簾内から声がした。同時に、しゃらん、と綺麗な音がする。
「惟道か。あいつ、相変わらず物の怪三昧の日々のようだな」
言いながら、青年は小丸を追い越して門をくぐった。少し躊躇った後、小丸も後に続く。
「章親ー、惟道からの使いが来てるぞー」
庭を歩きながら声をかけると、どこからともなく現れた童女が、素早く奥に走っていく。するとすぐに、童女の去ったほうから慌ただしい足音が聞こえてきた。
「も、守道っ。何、惟道が来たのっ?」
奥から走り出てきたのは、惟道と同じ歳ぐらいの陰陽師。これが安倍章親である。
「あれっ。君は確か」
「お久しぶりです」
ぺこんと頭を下げる小丸に、章親は柔らかな笑みを向けた。
「いやよく来てくれたね。疲れたんじゃない? どうぞ、入って」
屈託なく小丸を招き入れ、章親は先ほどの童女に茶と菓子を持ってくるよう言い付ける。
が、小丸は少し落ち着きなく、部屋の奥を見た。 門前から感じていた物凄い神気は、その奥から感じる。
「あのぅ、おいら、安倍家に来たのは初めてだけど、いつもこんな神気が溢れてるの?」
ここまで感じるのは小丸故なところもあろうが、陰陽師なのであれば普通より敏感なはず。ずっとこのように強い神気を浴びていると疲れるのではないだろうか。
おずおずと言うと、章親は、ん、と顔を上げた。
「おいらは妖狐だ。そこいらの物の怪よりも妖力は強い。そのおいらが疲れるほどの気って、人にも良くないんじゃ……」
「ほほぅ。おぬし、我の気を感じるか」
小丸の言葉に被る勢いで、部屋の奥に垂らされた御簾内から声がした。同時に、しゃらん、と綺麗な音がする。