あやかしあやなし
「惟道がいなくなってから、物の怪たちもあんまり出てこなくなってたし。毛玉とたまに遊んでるぐらいで」

 改めて、あんまり物の怪を構ってなかったな、と反省する。そもそも物の怪など普通は見えないものなのだから、気にする必要もないといえばそうなのだが。

「で、物の怪が怯えてるってのは、毛玉が言ってたのか?」

 守道が聞くと、章親は軽く頷いた。
 ちなみに毛玉というのは、一見もけもけの毛玉にしか見えない小鬼である。章親の小さいときの遊び相手で、悪戯が過ぎて長く封印されていたのを、最近になって章親が解放したのである。以来章親と主従関係を結び、昔と変わらず傍にいる。

「何だかやたらと術が飛び交ってるって。術の網がそこここに張ってあったりして、弱い物の怪たちが引っかかることがあるようだよ。僕はてっきり、毛玉みたいに悪戯し過ぎて懲らしめられてるんだと思ってたんだけど」

「物の怪に、そんな温情をかけるのはお前ぐらいだぜ。大抵の奴は、すぐに滅してしまうだろ」

「え、じゃあその網にかかった物の怪たちって、滅せられてしまったのかな」

 自分に小さな物の怪を問答無用に滅してしまうという考えがないので、まさか網を張ったところで滅するまではされていないと思っていたが、甘かったのかも、と章親が青くなる。

「どうだろうな? どの程度の物の怪を狩ってるのかはわからんが、小さくても物の怪は物の怪だ。そんな簡単にはやられないとは思うがなぁ。ただ若手の中には、使う機会のない強力な術を使いたくてうずうずしてる奴もいるし……。そんな奴は捕まえた物の怪に、その術を試すかもなぁ」
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