あやかしあやなし
「仕方ないから、おいらは伏見の上役にお願いすることにしよう」

「伏見? あ、稲荷神社」

 稲荷神社、と聞いて、守道の周りの気が少し揺れた。小丸が目をやると、守道の後ろに小さな童がいる。

「あ、その子もお狐様だ」

 さすが同じ眷属だけあり、小丸はすぐにわかったようだ。守道の御霊は、このお狐様・(こん)である。

「その子が一緒に来てくれれば、少し気が楽なんだけど」

「え、どうして?」

 見たところ、小丸も紺も、さして変わらない年の頃で、いわゆる子供だ。物の怪なので見たままの年齢ではないだろうが、子供だけで稲荷山まで行くのが不安なのかと章親は思ったわけだが。

「その子、神狐だもの。おいらよりも位が高いから、話が早そう」

「え、そうなの?」

「おいらはまだ俗な部分が多いのよ。野干寄りと言えばわかるかしら」

 簡単に言えば、神様よりも物の怪寄り、というところだ。そもそも御霊として降ろしているので、それなりのものなのだ。

「稲荷山って狐がいっぱいいるからね。上層部にはなかなか会えないし」

「狐の世界も身分がうるさいんだね」

 呆れたように言う章親に、小丸はため息をついた。

「しょうがないのよ。力の差が凄いから、わかりやすいし」

 小丸はまだまだ妖狐の中では力が弱いので、立場が弱いらしい。

「じゃあ直接鞍馬に行ったほうが早いんじゃないか? 烏天狗なのだったら鞍馬が本拠地だろ?」

 守道が言うが、小丸はぶんぶんと手を振る。

「無理無理。うちの稲荷山もそうだけど、決まった人外が占めてるお山ってのは、他の種は入れないものなのよ。手続き踏めば入れるけど、いろいろ面倒なのよ」
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