あやかしあやなし
「しかし、狩ったところでその物の怪をどうするのであろう?」

『陰陽師なんざ、物の怪を狩ることが仕事なんだし、狩ることに意義があるんだろうよ。狩った後なんて考えるもんかい。大方鳥辺野辺りに打ち捨てるんだろうさ。あの雛の惨状を見ても、何が目的かわかるってなもんよ』

「戦みたいなものか……」

 しかもかなり理不尽である。ある日いきなり狩られる羽目になった物の怪にとっては堪ったものではない。戦というのはそういうもの、と言ってしまえばそうかもしれないが。

「やはり気になるな」

 そう言い、惟道は不意に踵を返した。

『ちょいと。まさか都に行くってんじゃないだろうね?』

「生憎俺には術がない。章親に頼らねば雛の行方はわからぬ」

『だから、それは今小丸が探ってんだろ』

「待っておっては手遅れになるやもしれぬ」

『だからって、いきなりそんな……』

 慌てる鴆に、惟道は持っていた籠を押し付けた。

「これを持って帰って、和尚に伝えておいてくれ」

 言うなり走り出す。

『もーっ! そんな旅支度もしないまま駆け出して、野垂れ死にしたって知らないからねーっ』

 きゃんきゃんと喚く鴆の言葉に応えるように、走る惟道の周りの空気が若干揺れる。目に見えない類いの小さな物の怪がついているのだろう。

『ったく、そんな弱い奴らがついて行ったって、護衛にもなりゃしないのに』

 もっとも力が弱いからこそ、都までついて行っても物の怪狩りに遭わないかもしれない。烏天狗がやられるぐらいなのであれば、返って危険はないとも言える。

 ぶつぶつ言いながらも、鴆は押し付けられた籠を咥えて、寺に戻って行った。
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