あやかしあやなし
「おぬしは人も物の怪も集めるのじゃな」

「物の怪はともかく、人はどうであろう」

 手を止めて呟いた惟道は、己の手元に視線を落とした。豆の入った膝先の笊の中には、いつの間にやら小さな物の怪が何匹か入り、豆で遊んでいる。

「物の怪が寄ってくるのは、俺がそっち寄りだからではないのか」

 常人からすると、惟道は気味が悪いらしい。感情がないから表情もない。整った顔立ち故、より不気味に映るようだ。
 人には見えない物の怪も普通に見ることができるし、惟道自身、人よりも物の怪のほうが付き合いやすい。人というのは肚の内と外で真逆のことを考えていたり、やたらと見栄や体裁を気にしたり、惟道にとっては理解できない、摩訶不思議な生き物だ。

「ほっほ。わしとて世間からは、物の怪坊主扱いじゃ」

 からからと、和尚が笑う。この和尚も物の怪が見えるらしい。職業故か、元々なのか。

「おぬしのその稀有な力は、人にも影響しておるよ。……いや、人というよりは、おぬし自身に、かものぅ」

「?」

「おぬしの周りには、良き人が集まると思わぬか?」

「……道仙(どうせん)も良い人になるのか」

「おお、そういえば、そ奴もおったな。けどそ奴のお陰で安倍の子息と出会えたと思えば、悪いことばかりではあるまい」

 なるほど、と納得する。
< 5 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop