あやかしあやなし
「んでも惟道、烏鷺入れてるわりにはいつもと変わんないよ。元々人っぽくないからかなぁ」

 まじまじと惟道を見ながら、小丸は失礼なことを言う。

「物の怪が入ったところで、そう変わるものでもないのではないか? わしは妖気とかそういうものがわからぬからか?」

「それ以前に、和尚は物の怪だろうが人だろうが気にしないから変わったところでわかんないよ」

「そういうものかのぅ」

 呑気に言いながら、和尚は顎髭をしごいた。そして、ちらりと烏兎を見る。

「ま、おぬしはしばらくここで養生するがいい」

「いや、しかし……」

「おぬしだとて、無傷ではなかろうが。どっちにしろ、今は都に近付かぬほうがいい」

「う……む。して、そなたたちはどうするつもりなのじゃ」

 烏兎が惟道と小丸に聞くと、二人とも当たり前のように口を揃えた。

「都に行ってくるのさ」

「危険ではないか!」

 間髪入れずに烏兎が叫ぶが、惟道は相変わらずの能面だし、小丸も軽く首を傾げた。

「え~? だって一番手っ取り早い方法だよ?」

「中に雛が入っておっても、俺自身は人なのだし」

 烏鷺が入っているとはいえ、瀕死なぐらい弱っているので妖気というのはごく微弱だ。普通の人の器であれば、強い人の気に隠れて完全に遮断されるぐらいだが、如何せん惟道は『人の気』というもの自体が希薄である。
 故に微弱な妖気が漏れ出る。微弱な人の気と微弱な妖気を纏う惟道を、物の怪狩りのものらはどう見るか。
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