あやかしあやなし
第六章
次の日の朝早く、惟道は小丸と連れだって都に向かった。
「すまぬのぅ。しんどくはないか?」
惟道が、横を歩く小丸に言う。小丸は都から帰ってきて、ほぼとんぼ返りすることになる。が、足取りはかろやかだ。
「平気平気。だって今は、普通の人の速度だもの」
前は妖狐本来の力を発揮して、化野から都まで一気に飛んだ。だが今は惟道と一緒なので、普通に歩いている。
「妖力は使ってないから、単に体力の問題なのよね」
「ま、へたばったら負ぶってやる」
惟道は物の怪には優しいのだ。いや、正確にはそもそも周りに人がほぼいない生活なので、人に対しても優しいのかもしれないが。
だが人よりも物の怪のほうに意識が向くのは確かである。
「惟道こそ、中に烏鷺入れてるんだから、無理したら駄目よ」
「烏鷺というのが、雛の名か」
今さらながら、惟道が呟く。すると僅かに身の内で応える気配がした。
「おっ。雛が起きたぞ。どうじゃ、元気か? 住み心地は悪くないかの」
嬉々として己の胸元に語りかける。元々そう表情豊かでもないので、嬉々として、といってもいつもの能面が少し崩れた、という程度だ。それでもこれを章親辺りが見たら驚愕だろう。
「中に入ってるんだから、そうそう意思のやり取りなんかできないよ。普通は中に別のものが入ったりしたら普通でいられないでしょ。だから狐憑きとかいって、迫害されるんじゃない」
不満そうに口を尖らせて言う小丸だったが、惟道は己の胸に手を当てて、首を傾げた。
「すまぬのぅ。しんどくはないか?」
惟道が、横を歩く小丸に言う。小丸は都から帰ってきて、ほぼとんぼ返りすることになる。が、足取りはかろやかだ。
「平気平気。だって今は、普通の人の速度だもの」
前は妖狐本来の力を発揮して、化野から都まで一気に飛んだ。だが今は惟道と一緒なので、普通に歩いている。
「妖力は使ってないから、単に体力の問題なのよね」
「ま、へたばったら負ぶってやる」
惟道は物の怪には優しいのだ。いや、正確にはそもそも周りに人がほぼいない生活なので、人に対しても優しいのかもしれないが。
だが人よりも物の怪のほうに意識が向くのは確かである。
「惟道こそ、中に烏鷺入れてるんだから、無理したら駄目よ」
「烏鷺というのが、雛の名か」
今さらながら、惟道が呟く。すると僅かに身の内で応える気配がした。
「おっ。雛が起きたぞ。どうじゃ、元気か? 住み心地は悪くないかの」
嬉々として己の胸元に語りかける。元々そう表情豊かでもないので、嬉々として、といってもいつもの能面が少し崩れた、という程度だ。それでもこれを章親辺りが見たら驚愕だろう。
「中に入ってるんだから、そうそう意思のやり取りなんかできないよ。普通は中に別のものが入ったりしたら普通でいられないでしょ。だから狐憑きとかいって、迫害されるんじゃない」
不満そうに口を尖らせて言う小丸だったが、惟道は己の胸に手を当てて、首を傾げた。