あやかしあやなし
「……そうか? 別に変な感じはしないぞ? あ、ちょっと返答があったぞ」

「えええ?」

「といっても、こ奴はまだ人語を操れんのかな」

 何となく中の烏鷺の言葉を聞いている風な惟道に、小丸は思い切り訝しげな目を向けた。

「惟道、烏鷺が何か言ってるのがわかるの?」

「いや、普通に鳥が鳴くような感じだから、何を言っているのかまではわからんが。何となく、居心地が悪いわけではないようだ。不快な感じは受けない」

 満足そうに軽く胸を叩き、惟道は足を進める。

「凄いねぇ。結構な物の怪の烏天狗を身の内に入れて何ともないどころか、自分の意識のあるまま中身とお話できるなんて」

「普通ではないのか?」

「普通じゃないよ。さっきも言ったでしょ、自分の中から別の声がしたら、人なんて普通じゃいられないものなの」

「自分で入れておいて、驚くほうがどうかしていると思うが」

「それだけじゃなく、やっぱり人の気と妖気は違うしさ。妖気はあんまり人に良いものではないし。具合悪くなったりするんだよ」

「そんなこと言うと、中の雛が困るではないか。怪我人に気を遣わせるでない」

「……そういう問題ではないんだけどなぁ~」

 言いつつも、それ以上は口を開かず、小丸は惟道と共に都への道を急いだ。
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