あやかしあやなし
「あの安倍晴明の孫だよ? 陰陽寮にいて、知らないわけないだろ?」
「もちろん、晴明様は存じ上げている! しかし……」
「あんた、陰陽師なのかよ?」
小丸が思い切り疑わしい目で青年を見る。その様子を黙って見ていた惟道が、不意に口を開いた。
「下っ端なのではないか?」
途端に青年の顔が朱を帯びる。
「な、何を言うか! 大体貴様は何者だ! 罠に掛かったくせに、こちらの術をものともしないとは……」
「罠に掛かったわけではない。掛かったふりをしたまで」
冷静に言う惟道に、青年の顔から血の気が引く。
「おぬしは人か物の怪かの区別もつかぬのか? そんな能力で物の怪狩りなどすれば、下手したら人にも迷惑がかかるではないか」
「う、うるさい! ひ、人はわざと罠に掛かったりせぬ!」
「そうか? というか、罠に掛かっているのか掛かっていないのかすらわかっていなかったではないか。そんなことでは、うっかり罠の上に佇んでいるだけで、人だって狩られてしまうではないか。罠の上で止まっていれば、掛かっていると理解するのであろう?」
ずばずばと気付いたことを口にする惟道に、青年は真っ赤になった。が、口を震わせているだけで、言葉が出ない。このようなことを面と向かって言われたことがないのだろう。
「もちろん、晴明様は存じ上げている! しかし……」
「あんた、陰陽師なのかよ?」
小丸が思い切り疑わしい目で青年を見る。その様子を黙って見ていた惟道が、不意に口を開いた。
「下っ端なのではないか?」
途端に青年の顔が朱を帯びる。
「な、何を言うか! 大体貴様は何者だ! 罠に掛かったくせに、こちらの術をものともしないとは……」
「罠に掛かったわけではない。掛かったふりをしたまで」
冷静に言う惟道に、青年の顔から血の気が引く。
「おぬしは人か物の怪かの区別もつかぬのか? そんな能力で物の怪狩りなどすれば、下手したら人にも迷惑がかかるではないか」
「う、うるさい! ひ、人はわざと罠に掛かったりせぬ!」
「そうか? というか、罠に掛かっているのか掛かっていないのかすらわかっていなかったではないか。そんなことでは、うっかり罠の上に佇んでいるだけで、人だって狩られてしまうではないか。罠の上で止まっていれば、掛かっていると理解するのであろう?」
ずばずばと気付いたことを口にする惟道に、青年は真っ赤になった。が、口を震わせているだけで、言葉が出ない。このようなことを面と向かって言われたことがないのだろう。