バカな君へ、贈る愛
言われるがまま、佐伯くんについて行ってしまった。
ついたところは……別にどこにでもある普通のマンションで、佐伯くんは何にも言わないまま2階の階段まで上がっていく。
「ほら、入れよ」
2階にある家のドアを開けて、佐伯くんはわたしを入れてくれた。
……ここが、佐伯くんの家? 家に帰れそうにないとか言ってなかったっけ?
「よし、ここで住むか!」
「はいっ!?」
住む?
待って待って、住むってわたしがこの家に!?
「ん? お前、言ってただろ? 行く場所ないって。だったら、ここでいーだろ」
「あっ……うん」
そうだね、出て行ったとはいえ他に住む場所がなかったら、どうしようもないし。
それに、お父さんのところはもう戻りたくないもん。
……っていうか、戻れないんだよね。
しかも、佐伯くん、今のところ言葉はぶっきらぼうだけど行動がすごく優しいし、お父さんと比べ物にならないくらいだよ。
「一人暮らし……なの?」
「そりゃな。さっきも言ったように、俺は家族のとこに帰れねーし、こうでもしないと生きていけねーもん。雛形がいいなら、もう二人暮らしになるけどな」
でも、周りの人たちの目がちょっと怖いよ。
一般でいうと、彼氏と彼女が同棲しているみたいなものだし……。
佐伯くんこそ、わたしと付き合っているなんて誤解されるの嫌じゃないの……?