バカな君へ、贈る愛
「さてと」
おうくんは、家を見回した。
「まあ二人暮らしするっていうのはもちろん予定なしだったから、いろいろ用意しなきゃだよなぁ」
それは、そうだよね……。
「風呂とか困るじゃん? 俺、さっきまで一人暮らししてたから、風呂も男物のシャンプーだし、そこも用意しないとだし」
「あ、そうか……」
一応、お金は持ってきている。
学校では自動販売機があって、時々わたしも飲み物を買ったりするからね。
「じゃあ今から薬局に行って、買わないといけないよね……」
突然すぎたよね。
でも、今さら迷惑になるという理由で帰るわけにもいかない。
おうくんも優しいから、「やっぱり今から帰れ」なんてきっと言えないんだろうな。
「大丈夫? 行けそうか?」
「うん。最悪の場合、スマホの地図を使えば大丈夫だし……あっ」
そういえば、スマホの電源はもう10パーセントしかなかったはず。
いや、こりゃ無理だな……あれからさらに減って6パーセントと表示されている。
「やっぱ、俺も行くわ」
「おうくん?」
「いや、ほら、行くぞ」
良かれと思って、ついて行こうとしてくれているのは分かっているから、わたしも突っぱねるわけにはいかない。
「うん」
わたしとおうくんは、2人で靴を履いて外に出た。