バカな君へ、贈る愛

「うわー、懐かしい! あの頃と変わってないねー」



遊園地当日の日がやってきて、わたしは思わず見渡した。

今日は、絶好のお出かけ日和で青空がどこまでも広がっている。



「パパ、ママ! みて、メリーゴーランドだよ!」



「あんまり走りすぎないの!」



メリーゴーランドに向かって走り出す、ピンクの服を着ていて高い位置でツインテールをした小さな女の子。


そして、後ろから歩いているのは呆れたように笑うお父さんとお母さん。




メリーゴーランド、お父さん、お母さん……。


『おとーさん、おかーさん! メリーゴーランド! おうまさん!』



『ふふっ、可愛いお馬さんねぇ』



『乗るか?』



あっ……つい、思い出しちゃった。
確か……5歳くらいだったかな。

その時、お父さんとお母さんがこの遊園地に連れてきてくれて……。

明るい音楽とともに、くるくる回るメリーゴーランドに、幼いわたしは楽しくてはしゃいでいたなぁ。



「どうした? 乗りたいのか?」



「あっ、ううん。懐かしいなって」



「懐かしい?」



「うん。小さい頃、家族で行ってメリーゴーランド乗せてもらって……」



「お父さんもお母さんも笑顔だったなぁ」



わたしがあの時のことを思い出しながら言うと、おうくんは何故か不思議そうな顔をしていた。



「笑顔?」



「おうくん?」



「いや、別に。えーと、どこ行くか」



ずっと幼稚園児でいられれば、どれだけ幸せだったことか。


お母さんも生きていたし。

……はははっ、何考えているんだ、わたしは。


自分の考えていることがバカすぎて、笑うしかない。




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