女神の加護? いいえ、ケフィアです。
ケフィアへの第一歩
部屋でひとしきり話した後、オリヴィアはヴァイスと一緒に食堂へと運ばれた。
そして、そこで家族と夕食を取った。ちなみに獏は夢を食べるが、人間の食べ物も口には出来るらしい。ただ、味は解るが栄養にはならないそうだ。
太らないのはいいな、と思いつつオリヴィアは父・オーリンに話しかけた。
「とうさま……あのね?」
「どうした?」
「ヴァイスにきいた、ゆきみたいなクリームをたべてみたい」
「……ん?」
異世界に、乳加工品としてバターとチーズはある。あと砂糖も、多少は高額だが買えない訳ではない。更に、スープなどの料理用に脂肪分の高い生クリームもある。
しかし、その生クリームを泡立てて作ったシャンティクリームは食べたことがない。あと、ケーキもフライパンで作るパンケーキまでで料理用にオーブンこそあるが、卵の白身に砂糖を入れて泡立て、生地に入れて膨らませる調理法がそもそもないらしいのだ。
この世界には、水筒代わりの獣の皮を使った皮袋はある。しかしチーズは昔に偶然、山羊の乳を皮袋に入れて出来たが、普通は腐りやすい牛乳や山羊の乳ではなく水や酒を入れる。だからケフィア粒を作る為の前段階として、まずは家族に美味しい食べ物を提供して信用して貰うことにした。
とは言え、オリヴィアは齢三つである。それ故、父親に協力して貰うことにした。
「あのね? ヴァイスはめがみさまから、おいしいたべものについてきいたんだって……わたしも、たべてみたい」
「ほう?」
「スープとかに入れる、生クリームがあるだろう? それを攪拌すると雪みたいに白くて、口の中で溶けるクリームが出来るんだ」
「おしえてもらったけど、ちょっとちからしごとだから……あした、とうさまてつだってくれる?」
「わか」
「お待ち下さい!、お嬢様」
父・オーリンにお願いをしていると、そこで別の声が割り込んできた。
それに、顔を上げて――声の主である顔も体型も厳つい黒髪の男性を見て、オリヴィアは丸い頬を緩めてその名前を呼んだ。
「ヨナス?」
「ええ、ヨナスですよ……と言うか、お嬢様! 料理については、俺を通して貰わないと!」
「あ」
そう、剣士や格闘家に見えるヨナスは、オリヴィアの家の料理長であり、ハンナの夫でもある。今は、追加の皿を持ってきてオリヴィアの話を聞いたのだろう。
オリヴィアとしては確かに力仕事には最適だし、今後のことも考えるとありがたいが――第一弾であるシャンティクリームは、主食ではない。それなのに、お願いしていいか迷ったからまず父に頼ろうと思ったのである。
「……いいの?」
「もちろんですっ」
「氷水で冷やしながら、十数分くらいの泡立てになるぞ?」
「……え?」
「ただキチンと泡立ったらそれこそ、雪みたいに白くてふわふわのクリームになるぞ。ケーキに添えてもいいし、塗っても美味い」
ヴァイスからの援護射撃に、ヨナスは鳶色の瞳をキラキラと輝かせて言った。
「やります……むしろ、やらせて下さいっ」
そして、そこで家族と夕食を取った。ちなみに獏は夢を食べるが、人間の食べ物も口には出来るらしい。ただ、味は解るが栄養にはならないそうだ。
太らないのはいいな、と思いつつオリヴィアは父・オーリンに話しかけた。
「とうさま……あのね?」
「どうした?」
「ヴァイスにきいた、ゆきみたいなクリームをたべてみたい」
「……ん?」
異世界に、乳加工品としてバターとチーズはある。あと砂糖も、多少は高額だが買えない訳ではない。更に、スープなどの料理用に脂肪分の高い生クリームもある。
しかし、その生クリームを泡立てて作ったシャンティクリームは食べたことがない。あと、ケーキもフライパンで作るパンケーキまでで料理用にオーブンこそあるが、卵の白身に砂糖を入れて泡立て、生地に入れて膨らませる調理法がそもそもないらしいのだ。
この世界には、水筒代わりの獣の皮を使った皮袋はある。しかしチーズは昔に偶然、山羊の乳を皮袋に入れて出来たが、普通は腐りやすい牛乳や山羊の乳ではなく水や酒を入れる。だからケフィア粒を作る為の前段階として、まずは家族に美味しい食べ物を提供して信用して貰うことにした。
とは言え、オリヴィアは齢三つである。それ故、父親に協力して貰うことにした。
「あのね? ヴァイスはめがみさまから、おいしいたべものについてきいたんだって……わたしも、たべてみたい」
「ほう?」
「スープとかに入れる、生クリームがあるだろう? それを攪拌すると雪みたいに白くて、口の中で溶けるクリームが出来るんだ」
「おしえてもらったけど、ちょっとちからしごとだから……あした、とうさまてつだってくれる?」
「わか」
「お待ち下さい!、お嬢様」
父・オーリンにお願いをしていると、そこで別の声が割り込んできた。
それに、顔を上げて――声の主である顔も体型も厳つい黒髪の男性を見て、オリヴィアは丸い頬を緩めてその名前を呼んだ。
「ヨナス?」
「ええ、ヨナスですよ……と言うか、お嬢様! 料理については、俺を通して貰わないと!」
「あ」
そう、剣士や格闘家に見えるヨナスは、オリヴィアの家の料理長であり、ハンナの夫でもある。今は、追加の皿を持ってきてオリヴィアの話を聞いたのだろう。
オリヴィアとしては確かに力仕事には最適だし、今後のことも考えるとありがたいが――第一弾であるシャンティクリームは、主食ではない。それなのに、お願いしていいか迷ったからまず父に頼ろうと思ったのである。
「……いいの?」
「もちろんですっ」
「氷水で冷やしながら、十数分くらいの泡立てになるぞ?」
「……え?」
「ただキチンと泡立ったらそれこそ、雪みたいに白くてふわふわのクリームになるぞ。ケーキに添えてもいいし、塗っても美味い」
ヴァイスからの援護射撃に、ヨナスは鳶色の瞳をキラキラと輝かせて言った。
「やります……むしろ、やらせて下さいっ」