女神の加護? いいえ、ケフィアです。
女神へのお願い
唯は、双子の妹である愛に色々と奪い取られていた。
「わたしとおんなじ顔、やだ」
愛の言葉で、唯は顔を隠す為に眼鏡をかけさせられた。あと、なかなか美容院に行かせて貰えないので、伸ばしたままの髪を三つ編みにして誤魔化した。
そこから解るように、両親は愛だけを可愛がった。服や玩具。友人――は、双子とは言えアイドル並みに可愛い妹に比べて、唯は地味で不愛想だ。だから、仕方ないと思っていた。
……澤木は違うと思ったが、何とも思っていない相手とキスなんてしないだろう。だからきっと、今まで通りに愛に取られてしまったのだ。
「お幸せに」
だからそう言って二人の横を通り過ぎると、階段のところで追いかけてきた妹に腕を掴まれた。驚いて振り返ると、何故だか怒鳴りつけられた。
「何なのよ、いい子ぶって……悔しいでしょう? 泣いたり喚いたりすれば、いいじゃないっ」
「……え」
「そうやって、余裕ぶってるの本当にムカつく!」
そう言って、勢いよく突き飛ばされて――結果、唯は階段から落ちた。澤木の前で揉めて申し訳なかったが、最近はあちこちにカメラがある。状況だけ見るとかなりの修羅場だが、彼の無実は証明されるだろう。
(澤木君、何かうちの事情に巻き込んでごめん。いくら別れた彼女でも、目の前で死んだらショックだよね。本当、幸運を祈る……って、あれ?)
心の中で謝っていたところで、ふと唯は引っかかった。何故、神様から力不足という言葉が出たのだろうか?
不思議に思っていると、金髪美女が顔を上げて、申し訳なさそうに説明してくれた。
「実は……私は、別の世界の神なのですが。あなたの魂が、あまりにも綺麗で……幸せな一生を過ごせるように加護を与えたら、この世界の神に搾取されてしまい……結果、あなたを不憫な目に」
「……はぁ……まあ、最低限の衣食住は保証されていたので」
流石に驚いたが元々、人は非力なので神様に左右されることもあるだろう。そこまで考えて、唯は美女――女神に、思いついたことを口にした。
「そのお詫びに、異世界転生?」
「はい、あなたの知識にあるような、剣と魔法の世界です」
「……あの、その世界に家畜の乳を飲む文化と、酵母パンはありますか?」
「え? ええ」
「お願いです! チートとかはいいですから、どうかパン屋の娘に転生させて下さいっ」
「…………えっ?」
「山羊の皮袋に乳を入れて、パンの酵母と接触させれば、ケフィア粒が出来るんです! そのケフィア粒を使えばケフィアもですけど、パンにお酒も出来ます! それこそ昔の日本では、チーズに似た蘇を奉納する儀式があったそうなので……私も、異世界で女神様に奉納します! だから、どうかっ」
ケフィアは市販のケフィア粒を牛乳に入れて、常温で固めることで作れる。それを毎日食べていたので、魂が綺麗かどうかは解らないが、少なくとも腸は綺麗だと思う。
話が逸れたが、図書室で調べているうちに唯は世界の発酵乳や昔の儀式について知った。現代では逆に難しいが、ライトノベルなどで出てくる異世界なら出来そうだと思ったのである。
「約束しましょう。奉納の儀、楽しみにしていますね……二度目の人生に、幸いあれ」
そんな唯に、女神は笑って約束してくれた。
途端に眠くなり、瞼を閉じて――次に目覚めた時は、唯は想像していた通りの中世ヨーロッパ風な異世界に転生していた。
「わたしとおんなじ顔、やだ」
愛の言葉で、唯は顔を隠す為に眼鏡をかけさせられた。あと、なかなか美容院に行かせて貰えないので、伸ばしたままの髪を三つ編みにして誤魔化した。
そこから解るように、両親は愛だけを可愛がった。服や玩具。友人――は、双子とは言えアイドル並みに可愛い妹に比べて、唯は地味で不愛想だ。だから、仕方ないと思っていた。
……澤木は違うと思ったが、何とも思っていない相手とキスなんてしないだろう。だからきっと、今まで通りに愛に取られてしまったのだ。
「お幸せに」
だからそう言って二人の横を通り過ぎると、階段のところで追いかけてきた妹に腕を掴まれた。驚いて振り返ると、何故だか怒鳴りつけられた。
「何なのよ、いい子ぶって……悔しいでしょう? 泣いたり喚いたりすれば、いいじゃないっ」
「……え」
「そうやって、余裕ぶってるの本当にムカつく!」
そう言って、勢いよく突き飛ばされて――結果、唯は階段から落ちた。澤木の前で揉めて申し訳なかったが、最近はあちこちにカメラがある。状況だけ見るとかなりの修羅場だが、彼の無実は証明されるだろう。
(澤木君、何かうちの事情に巻き込んでごめん。いくら別れた彼女でも、目の前で死んだらショックだよね。本当、幸運を祈る……って、あれ?)
心の中で謝っていたところで、ふと唯は引っかかった。何故、神様から力不足という言葉が出たのだろうか?
不思議に思っていると、金髪美女が顔を上げて、申し訳なさそうに説明してくれた。
「実は……私は、別の世界の神なのですが。あなたの魂が、あまりにも綺麗で……幸せな一生を過ごせるように加護を与えたら、この世界の神に搾取されてしまい……結果、あなたを不憫な目に」
「……はぁ……まあ、最低限の衣食住は保証されていたので」
流石に驚いたが元々、人は非力なので神様に左右されることもあるだろう。そこまで考えて、唯は美女――女神に、思いついたことを口にした。
「そのお詫びに、異世界転生?」
「はい、あなたの知識にあるような、剣と魔法の世界です」
「……あの、その世界に家畜の乳を飲む文化と、酵母パンはありますか?」
「え? ええ」
「お願いです! チートとかはいいですから、どうかパン屋の娘に転生させて下さいっ」
「…………えっ?」
「山羊の皮袋に乳を入れて、パンの酵母と接触させれば、ケフィア粒が出来るんです! そのケフィア粒を使えばケフィアもですけど、パンにお酒も出来ます! それこそ昔の日本では、チーズに似た蘇を奉納する儀式があったそうなので……私も、異世界で女神様に奉納します! だから、どうかっ」
ケフィアは市販のケフィア粒を牛乳に入れて、常温で固めることで作れる。それを毎日食べていたので、魂が綺麗かどうかは解らないが、少なくとも腸は綺麗だと思う。
話が逸れたが、図書室で調べているうちに唯は世界の発酵乳や昔の儀式について知った。現代では逆に難しいが、ライトノベルなどで出てくる異世界なら出来そうだと思ったのである。
「約束しましょう。奉納の儀、楽しみにしていますね……二度目の人生に、幸いあれ」
そんな唯に、女神は笑って約束してくれた。
途端に眠くなり、瞼を閉じて――次に目覚めた時は、唯は想像していた通りの中世ヨーロッパ風な異世界に転生していた。