女神の加護? いいえ、ケフィアです。
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小さな子供が出来るお手伝いと言うと、スプーンや箸を並べたり、食べた後の食器を運んだり。あるいは、洗濯物をしまったりである。
しかし一般家庭ならともかく、辺境伯家ではそれらは皆、使用人の仕事だった。おかげで、オリヴィアにやれることがない。せっかく三歳になり、ある程度一人で行動出来るようになったのにだ。
(大きくなるだけじゃ、駄目だったのね……でも、せめて自分の部屋の掃除くらいは)
そう思い、だが貴族令嬢がいきなり掃除と言うと止められそうなので、オリヴィアは考えた。そして、最初はこっそりやり、徐々に公にしていこうと思った。
しかし隠れてやろうとすると、掃除道具を借りられない。それ故、雑巾代わりにする為に普段は数回使ったら新しいものに変わるハンカチを「無くした」と言って二、三枚隠し持った。そして朝早く、使用人達の目を盗んでトイレで雑巾を濡らし、部屋のテーブルや寝台周りなどを拭いていた。ちなみにトイレは各寝室に用意されているし、定期的に入浴の習慣もあるので、そこは前世の中世ヨーロッパのようではなくて良かったと思った。
そんな訳で、オリヴィアは朝早く起きて(赤ん坊の時よりは、早く起きられるようになった)掃除をしていた。
結果、部屋の掃除をしに来た使用人は、予想より綺麗で首を傾げていたけれど。掃除の時間は短くて済んだようなので、オリヴィアはこっそり満足していた。
「……お嬢様!」
「っ!?」
けれど、数日後の朝。椅子に上がってテーブルを拭いていたオリヴィアは、いきなり部屋に飛び込んできたハンナの声に驚いて固まった。
……どうやらオリヴィアは、ハンナ達に泳がされていたらしい。
※
朝食後、オリヴィアは両親に連れられて父・オーリンの執務室に入った。そして、並んで座る両親の前のソファに、オリヴィアは一人で座って向き合った。
そんなオリヴィアに、母・ウーナが優しく話しかけてくる。
「あなたにはあなたのお仕事があるの。だから、皆の仕事を取ろうとしては駄目よ」
「……おしごと?」
「ええ、よく寝てよく食べて、まずは健やかに過ごすことよ」
「でも……それじゃあ、やくにたてない……」
「オリヴィア?」
言われていることは解るが、納得は出来ない――役に立てないと、失望されて嫌われてしまうからだ。しかし前世からくるこの考え方を、どう説明して良いか解らない。
それ故、視線を揺らして黙り込んだオリヴィアに、黙って話を聞いていたオーリンが口を開いた。
「……オリヴィアは、いつも急いでいるな。何が不安なんだ?」
「え……」
「私達では、お前を守れないのかい?」
「…………」
違うと言えなかったのは、そもそも不安の元凶は両親や兄、そして使用人達だからである。だが、彼らが何かした訳ではないし――そこまで考えて、不意にオリヴィアは気づいた。
(そうだ。今の皆は『まだ』私を可愛がってくれてるんだ)
前世の家族は、それこそ物心ついた頃からオリヴィアというか唯を、疎んだり雑用係としか扱っていなかった。だから嫌われる理由を聞けなかったが、現世の家族になら聞けるかもしれない。
(それで嫌われたら、そこまでだよね)
そう思い、オリヴィアは勇気を出して口を開いた。
「……どうしたら、きらわれないのかな? すきになってもらうには、どうしたらいい?」
しかし一般家庭ならともかく、辺境伯家ではそれらは皆、使用人の仕事だった。おかげで、オリヴィアにやれることがない。せっかく三歳になり、ある程度一人で行動出来るようになったのにだ。
(大きくなるだけじゃ、駄目だったのね……でも、せめて自分の部屋の掃除くらいは)
そう思い、だが貴族令嬢がいきなり掃除と言うと止められそうなので、オリヴィアは考えた。そして、最初はこっそりやり、徐々に公にしていこうと思った。
しかし隠れてやろうとすると、掃除道具を借りられない。それ故、雑巾代わりにする為に普段は数回使ったら新しいものに変わるハンカチを「無くした」と言って二、三枚隠し持った。そして朝早く、使用人達の目を盗んでトイレで雑巾を濡らし、部屋のテーブルや寝台周りなどを拭いていた。ちなみにトイレは各寝室に用意されているし、定期的に入浴の習慣もあるので、そこは前世の中世ヨーロッパのようではなくて良かったと思った。
そんな訳で、オリヴィアは朝早く起きて(赤ん坊の時よりは、早く起きられるようになった)掃除をしていた。
結果、部屋の掃除をしに来た使用人は、予想より綺麗で首を傾げていたけれど。掃除の時間は短くて済んだようなので、オリヴィアはこっそり満足していた。
「……お嬢様!」
「っ!?」
けれど、数日後の朝。椅子に上がってテーブルを拭いていたオリヴィアは、いきなり部屋に飛び込んできたハンナの声に驚いて固まった。
……どうやらオリヴィアは、ハンナ達に泳がされていたらしい。
※
朝食後、オリヴィアは両親に連れられて父・オーリンの執務室に入った。そして、並んで座る両親の前のソファに、オリヴィアは一人で座って向き合った。
そんなオリヴィアに、母・ウーナが優しく話しかけてくる。
「あなたにはあなたのお仕事があるの。だから、皆の仕事を取ろうとしては駄目よ」
「……おしごと?」
「ええ、よく寝てよく食べて、まずは健やかに過ごすことよ」
「でも……それじゃあ、やくにたてない……」
「オリヴィア?」
言われていることは解るが、納得は出来ない――役に立てないと、失望されて嫌われてしまうからだ。しかし前世からくるこの考え方を、どう説明して良いか解らない。
それ故、視線を揺らして黙り込んだオリヴィアに、黙って話を聞いていたオーリンが口を開いた。
「……オリヴィアは、いつも急いでいるな。何が不安なんだ?」
「え……」
「私達では、お前を守れないのかい?」
「…………」
違うと言えなかったのは、そもそも不安の元凶は両親や兄、そして使用人達だからである。だが、彼らが何かした訳ではないし――そこまで考えて、不意にオリヴィアは気づいた。
(そうだ。今の皆は『まだ』私を可愛がってくれてるんだ)
前世の家族は、それこそ物心ついた頃からオリヴィアというか唯を、疎んだり雑用係としか扱っていなかった。だから嫌われる理由を聞けなかったが、現世の家族になら聞けるかもしれない。
(それで嫌われたら、そこまでだよね)
そう思い、オリヴィアは勇気を出して口を開いた。
「……どうしたら、きらわれないのかな? すきになってもらうには、どうしたらいい?」