女神の加護? いいえ、ケフィアです。
家族と向き合った日
変なことを聞くなと、叱られるだろうか?
いや、それは前世の家族で、現世の家族はそんなことはないと思う。思う、のだが――それなら何て言うのかと考えると、どうも浮かばない。今まで、現世の家族からオリヴィアに向けられていたのは笑顔ばかりだったからだ。
(ハンナ達の仕事を取ったのは、叱られるかもだけど……笑いながら、叱られる?)
子供の頃、愛が両親と出かけた時だけ、唯は家政婦さんの計らいでテレビを見ることが出来た。だから、前世で笑いながら怒る俳優の人がいたことは知っている。知ってはいるが、それも何だか違う気がする。
(私……本当に、ちゃんと今の家族と向き合っていなかったんだなぁ)
今更ながらに気づいて落ち込むオリヴィアの前で、両親はパチリと目を見張り――顔を見合わせた後、母のウーナがふ、と目を細めて言った。
「なって貰うって……私達はもう、オリヴィアのことが好きよ?」
「え……」
「頑張り屋さんなところが、可愛いわ。ああ、でも今回みたいに突っ走った時、困る人がいたら止めるわね……でも、周りを思ってのことだから、嫌いにはならないわよ?」
「そうだな。オリヴィアはいつも、急いでいるように見えていたから……さっきのが、オリヴィアの不安だったのかい? だったら私達はそのままの、好奇心旺盛なオリヴィアが好きだから、安心するんだぞ!」
「かあさま……とうさま……」
……オリヴィアでいいと、言ってくれた。
役に立ってようやく、家の片隅に置いて貰えるんじゃなく――何も出来なくても、前世の影響で妙なことをする幼児でもいいと、言ってくれた。
二人の言葉を聞いて胸が、そして目頭が熱くなる。
「「オリヴィア」」
「……ふぇ……っ」
やっぱり子供は、涙腺が弱い。
嬉しくて泣き出したオリヴィアの名前を呼ぶと、父は手を伸ばして抱き上げてくれた。そして母は、父親の腕の中に収まったオリヴィアの頭を、優しく撫でてくれた。
……その為、ますます涙が溢れて止まらなくなったけれど。
涙は、それからぬくもりは、前世からの不安も一緒に流して消してくれた。
※
その後、心配して様子を見に来て、泣いているオリヴィアを見た兄・エリオットが両親に怒るという一幕があったが、概ね穏やかに解決した。
だが、おかげで朝の掃除は出来なくなり。
目が覚めても、ベッドから出てしまうとメイド達も仕事をしなくてはいけないので――オリヴィアは、ベッドの中で本を読むことにした。
……絵本の中では、魔法使いなどが出てくる。
けれど、この世界に魔法は存在しない。だから、前世のライトノベルのように魔法で大活躍ということは出来ない。
それ故、ケフィアを作るとなると魔法を使うのではなく地道に、当初計画した通りにパンの酵母と山羊の皮袋と乳を接触させるやり方のみになる。
(幸い、料理人の人がパンも焼くからこの家にはパン窯はある……とは言え、お願いするのもだけど、この知識をどこから仕入れたかって理由が必要だから、家の蔵書を確認して……難しそうだったら、図書館とかないか確認ね)
うん、と決意を固めてオリヴィアは絵本に目を戻した。
(……もっとも、全く不思議がない訳じゃないのよね)
読んでいる絵本の中では、前世の昔話のように動物が普通に会話をしている。
前世なら、おとぎ話だからと話は終わっていたが――この世界には『話せる獣』が存在するらしいのだ。
いや、それは前世の家族で、現世の家族はそんなことはないと思う。思う、のだが――それなら何て言うのかと考えると、どうも浮かばない。今まで、現世の家族からオリヴィアに向けられていたのは笑顔ばかりだったからだ。
(ハンナ達の仕事を取ったのは、叱られるかもだけど……笑いながら、叱られる?)
子供の頃、愛が両親と出かけた時だけ、唯は家政婦さんの計らいでテレビを見ることが出来た。だから、前世で笑いながら怒る俳優の人がいたことは知っている。知ってはいるが、それも何だか違う気がする。
(私……本当に、ちゃんと今の家族と向き合っていなかったんだなぁ)
今更ながらに気づいて落ち込むオリヴィアの前で、両親はパチリと目を見張り――顔を見合わせた後、母のウーナがふ、と目を細めて言った。
「なって貰うって……私達はもう、オリヴィアのことが好きよ?」
「え……」
「頑張り屋さんなところが、可愛いわ。ああ、でも今回みたいに突っ走った時、困る人がいたら止めるわね……でも、周りを思ってのことだから、嫌いにはならないわよ?」
「そうだな。オリヴィアはいつも、急いでいるように見えていたから……さっきのが、オリヴィアの不安だったのかい? だったら私達はそのままの、好奇心旺盛なオリヴィアが好きだから、安心するんだぞ!」
「かあさま……とうさま……」
……オリヴィアでいいと、言ってくれた。
役に立ってようやく、家の片隅に置いて貰えるんじゃなく――何も出来なくても、前世の影響で妙なことをする幼児でもいいと、言ってくれた。
二人の言葉を聞いて胸が、そして目頭が熱くなる。
「「オリヴィア」」
「……ふぇ……っ」
やっぱり子供は、涙腺が弱い。
嬉しくて泣き出したオリヴィアの名前を呼ぶと、父は手を伸ばして抱き上げてくれた。そして母は、父親の腕の中に収まったオリヴィアの頭を、優しく撫でてくれた。
……その為、ますます涙が溢れて止まらなくなったけれど。
涙は、それからぬくもりは、前世からの不安も一緒に流して消してくれた。
※
その後、心配して様子を見に来て、泣いているオリヴィアを見た兄・エリオットが両親に怒るという一幕があったが、概ね穏やかに解決した。
だが、おかげで朝の掃除は出来なくなり。
目が覚めても、ベッドから出てしまうとメイド達も仕事をしなくてはいけないので――オリヴィアは、ベッドの中で本を読むことにした。
……絵本の中では、魔法使いなどが出てくる。
けれど、この世界に魔法は存在しない。だから、前世のライトノベルのように魔法で大活躍ということは出来ない。
それ故、ケフィアを作るとなると魔法を使うのではなく地道に、当初計画した通りにパンの酵母と山羊の皮袋と乳を接触させるやり方のみになる。
(幸い、料理人の人がパンも焼くからこの家にはパン窯はある……とは言え、お願いするのもだけど、この知識をどこから仕入れたかって理由が必要だから、家の蔵書を確認して……難しそうだったら、図書館とかないか確認ね)
うん、と決意を固めてオリヴィアは絵本に目を戻した。
(……もっとも、全く不思議がない訳じゃないのよね)
読んでいる絵本の中では、前世の昔話のように動物が普通に会話をしている。
前世なら、おとぎ話だからと話は終わっていたが――この世界には『話せる獣』が存在するらしいのだ。