タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
連れていかれたその先は
「解りました」
そう言ってくれると、メルはアガタ達をロラの傍に降ろしてくれた。それから大きさを小鳥サイズに変え、アガタの頭に乗ってきた。
小柄だったが、白髪の上にある耳と尻尾を見ると灰色の、狼のもののように見える。獣人は、実際の獣にはならないそうだが――その動物の性質は引き継がれるらしいので、年齢よりも元気そうに見えるのは、狼の力や瞬発力のせいだろうか? あとはカリスマと言うか、リーダーシップも関係あるかもしれない。
「あの、初めまして……ありがとうご」
「何だい、その隈は!? 顔色もっ……ラン! この子は今夜、あたしん家に泊めるからねっ」
「えっ? あ」
「あー、でもロラ婆。俺が飯食わせるって、約束」
「あんたの恩は、里の恩だからね! 気になるんなら、食材だけ持っといでっ。さ、行くよ!」
「了解ー」
「は、え、は」
「……っ」
お礼も疑問も、更にランの言葉も遮って老婆・ロラは、アガタの手を引いて歩き出した。
今更だが、メルは獣人達の前で喋ることは控えてくれていて――だが、強引に連れていかれるアガタの頭の上で、彼女同様に戸惑っている気配が伝わってきた。
そんなアガタ達を、ランは笑顔で手を振って見送った。
※
「お帰りなさいませ……あの?」
里には、小屋が並んでいて――そのうちの一つに入っていくと、金髪に白い兎耳の若い女性が出てきた。
そしてロラだけではなく、アガタとメルの姿を見て疑問の声を上げる。
もっとも、疑問はアガタもだ。獣人でも、異なる種族のものと結婚すれば親と子供の種族が違う場合があるらしいが、それにしてもロラと全く似ていない。しかも、ロラに対して敬語である。
「さっき、ランの声が聞こえただろう? 魔物を避けて、連れて来てくれた恩人だ」
「まあ……ありがとうございます。私は、コニー。ロラ婆の弟子として語り部の知識を学んでいます」
そう言って、年下のアガタにも敬語を崩さずコニーが挨拶をしてきた。金髪に、光の加減で赤く見える茶色の瞳。しとやかな美女の微笑みに、一瞬見惚れたアガタは慌てて名乗った。
「あ、アガタです。よろ」
「コニー。まずは、食事だ。見た通りだから、蜂蜜づくしでいくよ。あんまり食べてないみたいだから、蜂蜜を入れた麦粥を。あと、風呂も蜂蜜とハーブで用意しておくれ」
「え」
ロラの言葉に、アガタはギョッとした。それこそ商品にするくらいあるのだろうが、食事だけではなくお風呂にまで蜂蜜を入れているとは。しかもいきなり押しかけたアガタに、惜しみなく使うなんて。
だがコニーはまるで動じず、平然と頷いた。
「かしこまりました」
「あ、あり……」
ぐうぅ……っ!
お礼を言おうとしたが、食事の話題が出たことでお腹が鳴ってしまった。恥ずかしさに、咄嗟に俯いたアガタの頭を、喋れないメルが気遣うように羽根で撫でてくる。
「すぐ支度致しますね」
「……ありがとう、ございます」
そんなアガタに、コニーは優しくそう言ってくれて――顔は上げられなかったが、アガタはようやく遮られずお礼を言うことが出来た。
そう言ってくれると、メルはアガタ達をロラの傍に降ろしてくれた。それから大きさを小鳥サイズに変え、アガタの頭に乗ってきた。
小柄だったが、白髪の上にある耳と尻尾を見ると灰色の、狼のもののように見える。獣人は、実際の獣にはならないそうだが――その動物の性質は引き継がれるらしいので、年齢よりも元気そうに見えるのは、狼の力や瞬発力のせいだろうか? あとはカリスマと言うか、リーダーシップも関係あるかもしれない。
「あの、初めまして……ありがとうご」
「何だい、その隈は!? 顔色もっ……ラン! この子は今夜、あたしん家に泊めるからねっ」
「えっ? あ」
「あー、でもロラ婆。俺が飯食わせるって、約束」
「あんたの恩は、里の恩だからね! 気になるんなら、食材だけ持っといでっ。さ、行くよ!」
「了解ー」
「は、え、は」
「……っ」
お礼も疑問も、更にランの言葉も遮って老婆・ロラは、アガタの手を引いて歩き出した。
今更だが、メルは獣人達の前で喋ることは控えてくれていて――だが、強引に連れていかれるアガタの頭の上で、彼女同様に戸惑っている気配が伝わってきた。
そんなアガタ達を、ランは笑顔で手を振って見送った。
※
「お帰りなさいませ……あの?」
里には、小屋が並んでいて――そのうちの一つに入っていくと、金髪に白い兎耳の若い女性が出てきた。
そしてロラだけではなく、アガタとメルの姿を見て疑問の声を上げる。
もっとも、疑問はアガタもだ。獣人でも、異なる種族のものと結婚すれば親と子供の種族が違う場合があるらしいが、それにしてもロラと全く似ていない。しかも、ロラに対して敬語である。
「さっき、ランの声が聞こえただろう? 魔物を避けて、連れて来てくれた恩人だ」
「まあ……ありがとうございます。私は、コニー。ロラ婆の弟子として語り部の知識を学んでいます」
そう言って、年下のアガタにも敬語を崩さずコニーが挨拶をしてきた。金髪に、光の加減で赤く見える茶色の瞳。しとやかな美女の微笑みに、一瞬見惚れたアガタは慌てて名乗った。
「あ、アガタです。よろ」
「コニー。まずは、食事だ。見た通りだから、蜂蜜づくしでいくよ。あんまり食べてないみたいだから、蜂蜜を入れた麦粥を。あと、風呂も蜂蜜とハーブで用意しておくれ」
「え」
ロラの言葉に、アガタはギョッとした。それこそ商品にするくらいあるのだろうが、食事だけではなくお風呂にまで蜂蜜を入れているとは。しかもいきなり押しかけたアガタに、惜しみなく使うなんて。
だがコニーはまるで動じず、平然と頷いた。
「かしこまりました」
「あ、あり……」
ぐうぅ……っ!
お礼を言おうとしたが、食事の話題が出たことでお腹が鳴ってしまった。恥ずかしさに、咄嗟に俯いたアガタの頭を、喋れないメルが気遣うように羽根で撫でてくる。
「すぐ支度致しますね」
「……ありがとう、ございます」
そんなアガタに、コニーは優しくそう言ってくれて――顔は上げられなかったが、アガタはようやく遮られずお礼を言うことが出来た。