タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

寝起きドッキリ?

 神殿に引き取られた後。そして王宮の一室で結界を張っている時は、アガタは朝は誰よりも早く夜は誰よりも遅く起きていた。いや、起こされていた。しかも与えられてる食事も、朝の一食のみである。
 結果、一日三時間くらいが平均した睡眠時間で、目の下の隈はずっと消えなかった。更に睡眠不足の弊害で食欲も減退して、朝の食事もわずかのパンを水で流し込むので精一杯だった。おかげで痩せ細り、十八歳なのに背も伸びず発育も悪いので十四、五歳くらいにしか見えなくなった。

(他の神官達も結界の維持には携わっていた筈だから、別にわたしが眠っても結界が消えることはなかったと思うのに……怠くても体調崩しても、全く休ませてくれなかったのよね)

 最初は辛くて悲しくて泣いたこともあったが、全く構われなかったのですぐに諦めて、黙々と結界の維持を続けた。アガタには精霊同様、結界も見えないのだが何となく吸い取られている感じはして、それが結界を維持している感覚だと教えられた。それだけなら妙な違和感で済むのだが、ずっと床に描かれた魔法陣に直に座っていたので手足が冷えて大変だった。
 ……しかし、エアヘル国を出た今のアガタは、結界を維持する為にと暗いうちから起きる必要はない。そして同じく結界が張られているらしいが、家の周りだけだと範囲が狭いせいか吸われるような違和感を感じることもない。
 それ故、陽射しが射し込んでくる頃までぐっすり眠っていたのだが――不意に聞こえてきた声に、驚いて目を覚ました。

「ちょっ……魔物!? え? 何でだ!?」
「誰が魔物だ! アガタ様が起きるから、騒ぐな!」
「いや、だって毛玉なのに俺、持ち上げてるし、喋ってるし……って、何かおっきくなった!?」

 グリフォンが部屋、いや、家の外で誰かと話しているようだ。
 慌てて飛び出そうとするが、そこでアガタは自分が下着姿だったことを思い出した。服より丈は短いが、ワンピースタイプ。ただ生地が薄いので、いくら凹凸に乏しいとは言え、人前に出る格好ではない。
 だから慌ててワンピースに着替えて靴を履くと、アガタは慌てて寝室を出て、家の外へと足を踏み出した。
 そして目の前の光景に立ち尽くし、薄茶色の目をまん丸くした。

「アガタ様!? 起こして、申し訳ありませんっ」
「いや、謝るなら俺にだろ!?」
「うるさい!」
「……えっ?」

 通常サイズに戻ったグリフォンが、誰かを足蹴にしている。
 年の頃は、二十代前半くらいだろうか。精悍な面差しと、灰色の瞳――そしてその黒髪には、猫のような三角の耳が生えていた。
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