もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 藤島(ふじしま)が小さくステップを踏んでボールを運ぶ。
 ふん!
 なまいきに。
 ひとり、ふたり、相手チームの子をかわしてペナルティエリアに入った。
 えっ? ちょっと!
 ばかやろう。そんなやつ行かすな。止めろ! つかめ! なぐれ!
「……ぁ」
 前があいた。
 思った瞬間に、身体をひょいとひねった藤島が放ったシュート。
「うわーん。ね、明緒(あきお)。見た見た? いまのシュート。も、すごーい、藤島くん」
「……どこがっ」
 あのくらいできて当然。
 だれが教えたと思ってるんだ。
「すごいすごーい」
 涼子(りょうこ)の拍手に耳をふさぎたくなるのは、目をそらすことだってできたのに、それをしなかった自分に気がついたから。

 大きらいなのに。
 あたしはあんなやつ、大きらいなのに。

 涼子ってば、涼子ってば、もう!
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