もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「ねえ、明緒(あきお)藤島(ふじしま)くんて、なんで部活やらないのかしらね? バスケだってサッカーだって、すっごくじょうずなのにね」
 そんなの!
「根性がないか、女遊びが忙しいからに決まってるじゃない」
「また、そんなこと言う。明緒って、なんか誤解してない? 藤島くんのこと」
「そお?」

 言わないけど。
 アイツと知り合いだなんて絶対に言わないけど。
 アイツはね、中学のときは、やってたんだよ、サッカー。
 でも続かなかった。すぐやめた。

「誤解なんか、ぜっったい、してない」
「ふーん。ずいぶん断言するのね」涼子が横目でちらっとあたしを見る。
「実は、なんか知ってたりして、彼のこと」
 どきっ。
「な…によ! 涼子だって聞いてるでしょ? アイツの悪いうわさ」
 高校に入ってからの、この半年でだって、だれがふられた、だれが泣かされた、女子のにぎやかなおしゃべりは、通りすがりに何度も聞いた。
「それから判断したら、あんなやつ、そんなもんだってだけじゃない」
「…………」
 頭のなかまで見透かそうとする涼子の視線と、負けずにはりあう。
 あたしを見ていた涼子のキツイ目が、するっとグラウンドにもどる。
「ま、いいけど。そんなこと言って、あとから、やっぱり藤島くんが好きぃとか言たらいやよ。先に好きって言ったのは、あたしだからね」
「はい、はい」
 そんなこと心配しなくたって、も、100%大丈夫。
 うんざり気分のあたしの腕に、涼子の腕がするっとからんできた。
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