もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

(わり)ぃ、城ヶ根(しろがね)」「だいじょぶか、城ヶ根」「明緒(あきお)」「明緒っ」
 囲まれて。
 のぞきこまれて。
 あたしの目はたしかにみんなを見ているのに声が出ない。
 フロアに激突することは覚悟したのに――痛くない。
 ただ、おなかが苦しくて。
「……っ……」
 はくはく浅い呼吸をしながら、苦しい場所にさわってみた。
(――――腕?)

「お…まえ、どんだけ軽いのよ。おー、痛ぇ。ケツ割れたわ」
(――ぇ?)
「…ぇ? え? え、ぇぇぇぇぇぇ!?」
「明緒!」「だいじょぶ、明緒? どこも痛くない?」
 みんながあたしの顔をのぞきこんでる。
「ぇと…、あの……、ぅん」
(慎吾だ)
 慎吾の腕が、あたしのウエストを、ぎゅうっと()めつけている。
 あたしは慎吾のもものうえに、足を延ばしてどーんと座っていた。
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