もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「お…まえらぁ。女子になんてことするんだよ」
「…………」
 耳元で聞こえた声に、身体が芯から冷えてくる。
「ほんとごめん、城ヶ根(しろがね)。だいじょぶか?」
 素直にあやまって、しゃがんで頭を下げてくれる男子は悪くない。
 あたしだって……
 あたしだって、自分が女だってことを利用した。
 だけど――…
「…ん、だいじょぶ。だけど――今日はこれで…終わりにするね」
 腹筋で立ち上がろうとするあたしのウエストから、なぜか離れない慎吾(しんご)の腕は涼子(りょうこ)(はた)き落とした。
「ちょっと! いつまでさわってんの。離れなさい、座布団(ざぶとん)男!」
「座布団!」「がはははは」「(あずま)さんたら」
 三木ちゃんまで笑ってくれて、場の空気がなごんだのだけはありがたいけど。
 腕を引いてくれる涼子の力は必要ない。
 あたしはどこも痛めてない。
 でも、ありがとうは言わない。
明緒(あきお)! だいじょぶか? どこも痛くねぇか?」

 痛いよ。
 また心が痛いよ。

 慎吾はまた、あたしを女の子にした。
 女の子になったら、またあたしは仲間はずれに…なる。
 あたしの居場所は――どこ?
< 111 / 153 >

この作品をシェア

pagetop