もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 全然気にしていないふりで午後の授業を受けて。
 なんでもないって、みんなの心配をかわして。
 涼子(りょうこ)とふたりきりになってからは、慎重にその話題はさけて帰ってきた。
 慎吾(しんご)とはもちろん一度も顔をあわせてなくて……。
 だから、もやもやしたままでもう10時。

 予習だってまだ残っているのに、シャーペンを見ただけでジタバタ暴れたくなるから、なんにもできやしない。
 イライラにまかせて、おふろでゴシゴシこすった身体はヒリヒリするし。
「ああ、もう! ああ、もう!」
 たったひとついいことは、こんなありさまじゃ眠れそうもないから、あの、いやな夢は見なくてすむってことだ。

『だって明緒(あきお)、おまえ女じゃん』

 そんなことはもう、わかってる。
 仲間はずれにされてから生理がきて、ちょっぴりだけど胸だってふくらんで、あたしは女の子だ。

 でも、ちがうの。
(なにが?)

「ぁぁぁああああ、もうっ!」
 どすんとベッドにころがると、カツッと小さな音がした。
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