もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 あたしを見下ろすくらい大きくなったくせに、まるでコドモみたいに(くちびる)をかんで、
「いやだ」首を振る。
「それじゃ、意味ねえじゃんか! なけなしの勇気ふりしぼって声かけたの……。意味ねぇじゃんかよ」
「だったら」
「できねえよ!」
 だったらなんで波風たてるの?
 おとなしくしてないの?
 あたしの言いたいことが、まるでわかっていたみたいに、慎吾(しんご)があたしの言葉をさえぎる。
「ほっといたら、取られちゃうじゃんか。だれかに取られちゃうだろ?」
「…………」
 慎吾……。
(あずま)だって――女だってイヤだったのに! なんでいるんだよ、好きなやつ。そんなのひでぇよ。どうなるんだよ、おれは。4年…も、がんばってたのに……」
「…………」
「いつかきっと、こっち向かせてみせるって。でかくなって、強くなって、おまえにおれのこと、認めさせてみせるって。がんばってきた…のに……」
「し…んご…」
 こんなの、聞いちゃいけない。
 こんなの、だめだ。
 そう思うのに身体が動かない。
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