もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「ねえ明緒(あきお)――…」
 なに?
藤島(ふじしま)くん、いるのかなぁ、好きな子? 知らない?」
 なっ……
「知るか、そんなの!」
 突然あふれかえってきた凶暴な気分を、(のど)の奥に押しこめて涼子の腕をふりはらう。
 どうしてよ!
 なんであたしが、そんなことを知らなくちゃいけないの?
 アイツが、どこで、なにをしていようが、そんなこと、どうだっていいの、あたしは。
 勝手に聞こえてくるうわさだって。
 本当は、聞きたくもないんだから!

 どすどす地面にやつあたりして、コートに入る順番を待つ列に加わった。
「おっ、城ヶ根(しろがね)。やる気になったんなら、おれが相手してやらぁ。来い来い」
 ぽけーっとベンチに座っていた先生が、うれしそうにあたしを手招く。
「きゃー、明緒。やっちゃえ、やっちゃえ」「え、なになに?」
 とたんにあちこち騒がしくなって、あたしの手にはラケットが押しつけられた。
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