もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
14.先着1名様のオキテ
14.先着1名様のおきて

「うす」
 土曜のラストは4クラス合同の選択授業・芸術。
 移動のために席を立つと、ドアに寄りかかって慎吾(しんご)が…待っていた。
「よぉ藤島(ふじしま)城ヶ根(しろがね)か? マメだねぇ」
「あら藤島くん。入ればいいのに、明緒(あきお)でしょ。明緒ぉ、お迎え」
 廊下に向かう子たちも、もうからかうのにもあきたのか、ひと声かけて教室を出て行く。

 だれが見ていても、どう見ていても慎吾は変わらない。

 あたしにむかしふられた、と自分から公言して。
 それなのにあたしに平然と声をかけ続ける態度に、男子は無責任なエールを送る。
 女子は、あからさまに慎吾に興味をなくした子と、姉のように世話をやく子に二分して、以前のような陰口はもう聞こえない。
「藤島くん、あなた、いいかげんしつこいわよ」
 涼子(りょうこ)のように正面切って突っかかる子は、もちろんほかにいないし。
 あたしは――…
(わかんない)
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