もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「東よぉ、おまえに迷惑かけてるか? さっとと行け、金魚のふん」
「なんですってぇ?」
ドア口でいさかいを始めるふたりは、放っておけばだれかが止めてくれる。
「あー、はいはい。どいてどいて」「東さん、ほら、行くわよ」
涼子に冷たい慎吾は、女子を味方につけた。
あこがれの王子様ではなくなった慎吾のまわりは以前よりも女子たちで華やかだ。
涼子もそんな女子たちと、このごろはあたしなしでもつきあえているらしい。
(わかんない)
あたしはあたしがわからない。
「明緒、おまえ工芸じゃん。のんびりしてていいのかぁ? 早く移動しようぜ」
「――ぁあ。うん」
このごろあたしは身体が重い。
女子は月の半分もが体調不良でつらい子もたくさんいるし、もうすぐアノ日だから、いまアノ日だから、余計な心配をかけないアイコトバもちゃんとある。
そういうことを高校生になってから学んだあたしは、最初は照れてしまったけれど、便利だなぁと感心もした。
女子とか男子とか、きちんと分けてもいい時間。
みんなそれを自然に身につけていて、男子をおだてて楽をする。
(あたしは……)
「わかんない……」
うつむいて自分の足につぶやいたのに「ん?」と慎吾が聞いてくる。
「なんでもないよ」
「――――そか」