もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
このごろ慎吾といると、いろいろなことがわからなくなる。
ぼんやりなにかを考えていて、英語のリーディングを当てられた子がどこを読んでいるのかわからなくなっても、まわりの音につられてページをめくる、あのかんじ。
みんながどこを見ているのか――。
それすらわからないまま、まわりの子のまねをして、ただページをめくる。
廊下の個人ロッカーからエプロンを取り出して。
気持ちを切り替えて歩き出すと、腕にするっと涼子の腕がからみついてきた。
相変わらず、温かくて柔らかい女子の胸。
うらやましいとは思わないし、えっちな気分にもならない。
あたしとはちがうなぁ、とただ思うだけ。
だからあたしは、男子になりたいわけじゃないと思う。
でも。
『だって明緒、おまえ女じゃん』
慎吾の言う『女』でもないと思うんだ。
(あああ、もう!)