もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「でも、藤島(ふじしま)くんが……」
 あたしの大声にとまどいながら、涼子(りょうこ)がちらっと、うしろを黙ってついてきている慎吾(しんご)を見たのに気づいて、きゅうにぐぐっと(のど)のあたりが熱くなる。
「それ、誤解だから」
「うそ!」
 正面に回って、あたしの目をのぞきながら目で聞いてきた涼子に、うなずいて答える。
「カレシなんて……いない」
「……マジかよ……」
 うしろでつぶやく慎吾の声が聞こえたとき、
(ああ……)
 ため息がもれた、自分に。

 カレシなんか、いない。
 それは確かに事実だけど。
 だからって、なんでわざわざ、あたしはそれを慎吾に教えるの?

 うしろにいる慎吾が絶対、聞いていること。
 あたしはちゃんと知っていた。
 なのに、なんで?
 なんで、わざわざ?

「あーん、もう! そうだと思った! 明緒があたしに隠しごとなんて、するわけないものね。おーやだ! なんで信じちゃったんだろ、こんなバカの言うこと!」
 ピッと指さされて、名指しで涼子になじられた慎吾は、
「…………」
 無言であたしを見ているけど。

 その目が言っていた。
 本当なのか? そうなのか?
 答えられないあたしは目をふせる。
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