もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
(ああ……)
 逃げることしかできないくせに。
 自分ですら自分の気持ちを、もてあましているくせに。
 いまさら後悔したって、もうおそい。
 気をもたせるようなことを、こっそり言っちゃってから、後悔したっておそいんだ。

「ね、明緒(あきお)涼子(りょうこ)の腕がぎゅっとあたしの腕にからんできた。
「だからってまさか、藤島(ふじしま)くんとなんて……。思ってないわよね?」
 ぎくっとして。
 一瞬、返事が遅れたあたしの代わりに、
「思ってるわきゃねえだろ! こないだキッツイ3発め、くらったばかりだぜ」
 慎吾(しんご)がそっぽを向いて吐き捨てる。
「慎…」
 びっくりして。
 抗議しかけたあたしの腕を涼子が引いた。
「3発め? うそ。またなにかあったの?」
 真剣にうったえる目が悲しくて。
「なにも……」
 首を振る。
(大丈夫……)
 あたしは、大丈夫だよ、涼子。
 あたしは友だちの好きな子に、ひかれたりしない。
 まして、相手が慎吾なら。
 そんなこと、だれが許しても、あたしが許さない。
 そんなの……だめ…なんだから。
 そんなの、絶対。
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