もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 ぽそっとつぶやくと、電光石火のすばやさで慎吾(しんご)が振り向く。
「それって、あきらめんなって言ってんの?」
 …って、聞かれても困るんだけど。
涼子(りょうこ)がさ、あたしのほうが好きなんだって。慎吾より」

 それだけで以心伝心。
 ぱっと笑顔になれちゃう慎吾が好きだ。

 慎吾は、きっと命の次くらいに大事なボールを放り出して、あたしをつかまえにきた。
「ちょっ…、早すぎ」
疾風迅雷(しっぷうじんらい)のサイドバック。なめんなよ」
「意味もわかってないくせにぃ」
「うん。クラブ通信に書いてあったんだけどさ。今度、意味教えてくれよ」
「なに、それ。あほの子?」
 あきれるあたしを、慎吾が笑いながら浮かれて抱きしめる。
「でも! これでちゃんと、おれのことを考えてくれるんだってことは、わかってるからいいんだ。…な?」
 そうだけど。
「まだその先、どうなるかなんて、わ…かんないでしょ」
「だからぁ」慎吾が笑って、あたしの髪に(ほほ)をすりよせてきた。
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