もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 なんだか、それがあやしくなってきたのは、涼子(りょうこ)がアイツを好きになったせいだ。
 涼子の口からアイツの名前が出ると、あたしは思いきり女の子になっちゃうから。
 だって、思いだして……。
 アイツに『女じゃん』て言われた、あの日を思いだして……。

「ああああ、もう!」
 鏡のなかの自分にマシンガンパンチ。
 こんなんじゃ、あたしの人生、だれが主役だかわかりゃしない。
 夢のなかにまで勝手にでしゃばられているのに。
 わざわざ自分からあんなやつのことを考えるな、ばか明緒(あきお)
 あたしの頭から、
「消えろぉー。ばかしん――っ!」
 言いかけた口を、あわててつぐむ。
 アイツはもう、あたしにとって、いっしょに遊んでいた慎吾(しんご)じゃない。
 ただのアイツだ。
 口をきいたこともない、ただの、同級生の、女ったらし。
 藤島(ふじしま) 慎吾!
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