もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 女ったらしの藤島(ふじしま) 慎吾(しんご)

 ナニナニちゃんが藤島にふられた、泣かされた。
 アイツのそんなうわさなら、中学のときからイヤになるほど耳に入ってきてたけど。
 あんなやつ、だれとなにをしようと勝手だけど。
 まさか友だちが、あんなやつの餌食(えじき)になるなんて思いもしなかった。
 そう、まさに、餌食。
 だって絶対、アイツは涼子をねらったんだから。
 沿線でも評判の姫オブ姫・(あずま) 涼子を。

 涼子を恋人にすれば、そりゃ鼻が高いだろうけど。
 なんとなくアイツの影が涼子のまわりでチラチラしてるって。
 あたしが気づいたときには、涼子はもうイライラしてた。
 振り向かないアイツを気にして、アイツの姿を追いかけて……。
 それが涼子をその気にさせるための、藤島の女ったらしのテクニックだってこと。
 あたしは何度も口をすっぱくして言ったのに。
 あたしの忠告なんか、
『だったら、その気にさせちゃえばいいんでしょ』って、にっこり笑う涼子の前じゃ馬の耳に念仏状態。
 そうしたら、あとはもう、
『ほら、藤島くんが――』『ねぇ、藤島くんて――』
 耳が腐りそうなほどの、涼子の藤島百連発から逃げたかったら、あたしはあんなやつ、大っきらいなんだから黙ってよ! としか言えないじゃない。
 だってあたしたちは友だちなんだから。
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