もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
明緒(あきお)さぁ、いいかげん、あんな子のこと、かまうのやめなよ」
「そうそう。なにが原因か知らないけどケンカしたんでしょ? チャンスだから、このまま別れちゃいな」
 別れる?
 恋人じゃあるまいし、なに言ってんだかな。
「だいたい明緒もおかしいよ。どうしてあんな子の世話をするのよ」
 世話って別に……。
「あたしはメイドさんじゃないしぃ」
 ぷははははは。
 ほがらかに響き渡る笑い声。
 笑うところじゃないと思いますが?
「けど、ほーんと不思議よね。どうして男はあんな子がいいんだろ」
「顔でしょ、顔」
「言うほどぉ?」
(うーん)
 やっぱりあたしは、こういう話は苦手だ。
 だいたい
涼子(りょうこ)は性格が悪いとか……、そういうのじゃないと思うよ。自分に正直なだけで」
「ええー。明緒ってば、あんな態度されてもあの子のカタ持つの?」「信じられない。別れたんでしょ?」「正直ってなに? あの暴言が?」
 いっせいにしゃべるのはやめてちょうだい。
「あーもう。とにかく! 恋人でもあるまいし、別れたとかやめて」
 あたしのささやかな抗議は、だれにも聞いてもらえなかった。
「だいたい涼子ってさ」
「そういえば涼子って」
「…なのよ、涼子って」
 みんなして涼子の悪口大会。
(はぁ……)
 こういう欠席裁判は、好きじゃないな、あたし。
 机に頬杖をついて。
 うんざり投げた視線で涼子の視線を受けた。
 涼子は唇をかんで、あたしを見ていた。
 涼子の悪口を言っている、みんなのなかにいるあたしを。
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