もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 それなのに、どうしてこんなことになるんだろう。
 このままじゃいけないって思うのに。
 誰が正しいとか、悪いとか。
 そんなことにこだわって、イライラと毎日をすごすなんて。
 これでもあたしは、自分を大切にしてると言えるの?
「ああ……」
 こんなのは、めちゃくちゃ気分がよくないよ。
(だって…)
 あたしは涼子(りょうこ)をきらいになったわけじゃない。
 勝手に誤解して、あたしの話を聞こうともしない涼子に、怒っているだけなんだから。
(だったら…)
「はぁ……」
 また、ため息だ。
 わかってる。

 自分から対決しに行って。
 話して誤解をといて。
 仲直りすればいい。

 そんなことは、わかってるけど……。


 お昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴って。
 逃げるように教室から出ていった涼子が、うつむきながら教室にもどってきたとき、思わず腰が椅子から浮いて。
 心が決まった。
 椅子に腰かける瞬間に、(ほほ)を隠すように揺れていた髪を涼子が指でかきあげたとき、そこにあたしは見たから。

 泣いていた…顔。

(ああ……)
 あたしが泣かしたの?
「ごめんね――…」
 もちろん、うやむやにして仲直りとか、そんなのはいやだし。
 それはダメだって言えないような関係なら、友だちになんかならないほうがいいと思う。
 でも。
 泣かないでって。
 ひとりにして、ごめんって。
 そんなことも言えないなら、あたしはあやまれるから。
 たとえこの先、いやなことが待っているって、わかっていても。
 ケンカの元々の原因は、自分が悪いんじゃないと、思っていても。
 あたしは、あやまれるから。
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