もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
涼子(りょうこ)……」
 あちこち(はた)くように探って、やっとジーンズのお尻ポケットで見つけたハンカチを握りしめて、静かに近寄った。
 始業のチャイムが鳴っている。
 このままだと授業をさばることになりそうだけど、不思議と困った感じはしなかった。
 いま、あたしにとって授業より大事なのは、涼子の笑顔を取りもどすこと。
「…………」
 そっと差し出したあたしの手を、涼子がはらう。
 顔はもう涙でぐしょぐしょだ。
 泣いていることを隠そうともしない、コドモみたいな泣きかた。
「涼子……」
「ばかっ!」
 うん。
明緒(あきお)の……ばかっ!」
「うん……」
「ど…して、あたし…ひとりに…、したのよ」
 うん。
「ごめん」
 言いながら、もう一度差し出したあたしの手から、涼子がハンカチをつかみ取る。
「許さない…から。もう、こんな…の、許さないから……」
「うん……」

 泣きやんだ涼子(りょうこ)とふたり、次の授業までの時間を、黙って風に吹かれてすごした。
 あれこれ言葉にするよりも、いっしょにいる、そのことのほうが大事な気がして。
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