もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「よ…くもまあ、そういう態度できるよね」
 だめだ、今度は止められない。
「ふざけるのも、いいかげんにしなさいよ? 女の子をその気にしておいて――。泣かせて――。アンタに責任はないってか。あの子は――、涼子(りょうこ)は――本気だったのに!」
「はあ?」
 藤島(ふじしま)(まゆ)をしかめたのが、うすぼんやりした明かりのなかでも見えた。
「ちょ、待てよ…」
 うるさい!
「男なんて選び放題なのに! き…みが、いいって言ってた。止めたのに……、きみがいいって言ってたんだ。ひどいじゃない!」
明緒(あきお)!」
「だまれっ! ひとをなれなれしく名前で呼ぶなっ!」
「…………」
「泣かしたりして、許さない。許さないんだからね!」
「…………」
「なんなのよ! なんとか言いなさい!」
「…………」
 ちくしょう。
 だまれって言ったのは、あたしだ。わかってる。
 でも、反応を返してこない相手にどなった言葉は全部自分に返ってきて、あたしは気がついていた。
 どなるより、なじるより、もっと大事なことに。
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