もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「涼子のこと」
それでも声がかすれた。
「もう一度、考えてやって!」
(ああっ!)
言った! 言えた!
「…………」
返事はなかったけど、そんなのかまわない。
これは、あたしの気持ちのけじめ。
涼子を大事に思う、あたしの気持ちのけじめなんだから。
「じゃっ……」
なぜだか涙がでそうな気分をこらえて、歩きだしたあたしを、
「待てっ!」
今日はじめて聞くキツイ声で、藤島が縛りつける。
続く沈黙が藤島にも気まずいことを祈ったけど、藤島はゆっくりと確実に近づいてきた。
「明緒……」
「なれなれしく、呼ぶなって、言った」
言い返すけど。
もう殴りつける気力も残っていないあたしの手は、伸ばせば届くところに立ち止まった藤島を黙って見逃してしまう。
藤島が小さくため息をついた。
「要するにおまえは、東の男が、おれじゃいやなんだ。そうなんだろ?」
「…………」
わかってるなら、聞くな!
思うのに、一度そらした目は、もう藤島をにらむこともできなくて。
「友だちの男が…大きらいなやつだなんて、たまんねえもんな」
「…………」
「だけど、おれが東をふったことは気にいらねえんだ?」
「…………」
図に乗った藤島にたたみかけられても、言い返すこともできない。