もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「そんなに(あずま)が大事か」
 声にあざ笑うかんじがまじっていたのが気にさわった。
「だって、友だちだ!」
「友だち?」即座に言い返してきた藤島(ふじしま)が、
「たった半年のつきあいの! いつだってベタベタ甘えてる! くだらねえことでプンスカ怒ってそっぽを向くような、自分勝手なお嬢さんが、友だちか?」
 びっくりするような剣幕で、どなりかえしてきた。
「だったら、おれたちはなんなんだよ、明緒(あきお)。おれたちは友だちじゃなかったのかよ?」
「…………」
 よみがえった思い出に言葉がつまる。

 あたしを見下ろすのは、あのころのチビ慎吾(しんご)じゃない。
 コロシたいほどうらんでいる、大きらいな藤島のはずなのに。

「しん…ご」
 見つめられて。
 目をそらしたがっているあたしの口からスルッと出てきたのは、ムカシの呼び名。

「おれ、わかんねえよ、明緒。おれたち、なんでこんなになったん…だ?」
 ちくしょう。
「いまは……、あたしたちの話なんか、して…ない」
「なら、しよう! これから、しよう。おれたちのこと、話そう、明緒」
「慎吾……」
 首を振るあたしの腕を、長い指がつかむ。
 気持ちはこんなに食いちがっているのに、呼びあう名前はあのころと同じ。
 ここで遊んでいた、あのころのあたしたちと同じ。
(だけど――…)
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