もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 だけど、あたしたちは、ちがう。

 むかしは、こんなふうに、きみはあたしを見なかった。
 あたしはきみを、見なかった。

 あたしの腕をつかんでいる、こんな力は、あたしは知らない。
 知らないよ。

「放せっ」
 力まかせに振った自由なほうの腕が、慎吾(しんご)につかまる。
明緒(あきお)……」
 両腕を押さえこまれて。
 あたしはもう、見つめられても逃げる場所がなかった。
「明緒」
「……っ……」
「おれは、(あずま)なんか知らねえよ、明緒。お…れは、ずっと、おまえを見てた。おまえを見てたんだ」
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