もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「と…つぜん、ばかなこと言わないで!」
「あらぁ。けなげにダイエットとかしてるくせに。隠さない、隠さない」
「お母さん!」
 コロス!
 両手をグゥに(にぎ)ったときには、母さんはもう、でっかい慎吾(しんご)の背中に隠れていた。

 母さんを背中にへばりつかせた慎吾が、ひょいっと眉をしかめる。
「ボーイフレンド?」
「なっ…」
 おまえも、なにを真面目に聞いてるんだ、ばか慎吾!
「あっ。ボーイフレンドっていう言いかた…古い? カレシ、かな?」
「お母さん!」
 ううう。
 どうして後悔っていうのは先にできないんだろう。
 こんなことならゴミ袋くらい受け取っておけばよかった。
「行くよ! んもう」
 ゲームショーのディスプレイみたいに突っ立って、門の前をふさいでる慎吾と、その背中に隠れてニヤニヤ笑っている母さんの横をすりぬける。
「ちょっ…。待てよ、明緒」
「あら! ちょっと明緒ちゃん。ゴミ、ゴミ!」
 うるさいわっ。
 叫べるものなら叫びたかったけど、YESもNOも、反応したらこっちの負けだ。
 わかってないやつ選手権なら、どちらもチャンピオン級なんだから。
 ここは無視。
 無視が1番!
「えっと…、じゃ、おれ、捨てておきますよ、おばさん」
「んまあ、慎吾ちゃんがぁ? 悪いわぁ」
(げげげげげ)
 うしろで展開しだした、身の毛もよだつ良いひとごっこは無視して先をいそぐ。
 だいたいアイツは、なにをしに来たんだ。
 なんなんだ。
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