もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 なるようになるのが、どうして『大丈夫』なんだ!

 電車の到着を知らせるアナウンスが入って、ホームにいる人たちが微妙に動きだす。
(ああ、もう)
 早くどいて、離れて!
 アンタってば、でかいんだから。
 どこからだって見えちゃうんだから。
「いいげんにしてよ! また、あたしたちにケンカさせたいの?」
 思わず出た弱気な本音に慎吾(しんご)が立ち止まる。
「ばか言え」
「…………」
 なによ。わかってくれるんじゃない。
「じゃ、放して」
 力をこめて引いた腕に、慎吾の手はそのままついてきた。
「あいつがそれほどバカなら、おれだってもーちっと、やさしくなれるんだ」
(はあ?)
 電車がホームに入ってくる。
「うわっ」
 とっさに身体をかがめたあたしの襟首(えりくび)を、慎吾が猫でもつまむみたいに持ち上げた。
「心配するなって。おれは魔法の言葉、知ってるからよ」
 なんなんだ、そりゃあああ。
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